プロ野球でも積極的にデータを活用する球団が増えてきた。
なかでも、トラックマンという言葉を聞いたことがある人もけっこう多いのではないだろうか。
トラックマンとは、デンマークのTRACKMAN社が開発した弾道測定機器のこと。
軍事用レーダー式の弾丸追尾システムを応用した製品で、専用のレーダーによってボールをトラッキング(追尾)することができる。
特にゴルフで活用されていたトラックマンだが、日本プロ野球でも導入している球団が増えてきており、よく名前を聞くようになった。
トラックマンでは、ボールをトラッキングし、あらゆるデータを取得できる。
例えば、投球データの場合は、リリースポイントの位置・球速・回転数(回転速度)・ボールの変化の大きさ・ホームベース到達時のボールの位置など。打撃データの場合は、打球の速度・角度・飛距離などだ。
実際には40データほど計測できるといい、各球団はこういったデータをチームの強化や戦略に活用している。
また、MLB(メジャーリーグ)における、トラックマンや複数の光学高精細カメラを駆使し、グラウンド上の選手やボールの位置などのデータを記録・数値化するシステムのことを「スタットキャスト」といい、トラックマンのデータはスタットキャストの一部といえる。
メジャーリーグでは、すでに全球団30の球場にトラックマンが導入されており、日々様々なデータが計測されている。
昨今メジャーリーグでは、データ活用によって生まれた「フライボール革命」という新たな打撃理論も話題になり、ホームランが量産されるようになった。
日本で一番最初にトラックマンを導入したのは東北楽天イーグルス。2014年のことである。
それを皮切りに他球団もトラックマンを導入するようになり、2017年時点では7球団が導入していた。
ニュースなどの報道によれば、2018年には新たに4球団が導入するとされ、広島カープをのぞく11球団がトラックマンを導入することになる。
2005年以降Bクラス(4・5・6位のいずれか)の常連だった横浜DeNAベイスターズが、2017年にリーグ3位、クライマックスシリーズを勝ち抜き、日本シリーズ進出を決めるなど、大躍進の要因はデータ活用だというし、西武ライオンズがIT戦略室という新たな組織を設置するなど、プロ野球界においてもITやデータの活用はますます重要になってくるはずだ。
横浜DeNAベイスターズ躍進の要因は徹底したデータ活用だった
埼玉西武ライオンズはIT戦略で10年ぶりのリーグ優勝を目指す
日本では、各球団が集めたデータは球団や分析会社のみで使われ、一般に公開されることはない。(テレビ中継でホームランの際に飛距離など一部のデータが出されていることはある)
しかし、米国では取得されたデータの一部が、メジャーリーグが公式に運営しているサイト「Baseball Savant」で公開されている。
もちろん非開示のデータもあり、分析手法は球団内の極秘情報だ。ただ、投手のリリースポイントやボールの通過位置、打球速度や角度、飛距離などの数値は公開され、商用利用でなければ誰でも自由に使えるようになっている。
データをオープンにすることにより、別の人が研究を進めることができるし、新しい技術開発が期待できる。
日本でもこういった動きがあると、日本独自の指標、あるいはスタットキャストのようなシステムが開発される可能性があるのではないかと期待している。