国際サッカー連盟FIFAが16日にコロンビアのボゴタで理事会を開き、6月14日に開幕するW杯ロシア大会において、「VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)」とよばれるビデオ判定を導入することを正式に決めた。
VARとは、試合中に起きた微妙な局面を映像で確認し、主審に伝えて判定を手助けするビデオ副審のこと。
VARが携わるのは「得点」「PK」「一発退場」「(警告、退場などの)人定」に限られ、あくまで最終的な判定は主審に委ねられる。
W杯ロシア大会では国際審判員が任命され、3人の補佐役(AVAR)とチームを組んで、スローモーション専用を含む30台以上のカメラからの映像を検証する。
FIFAは2014年の前回W杯で初めてゴール判定の技術である「GLT(ゴールライン・テクノロジー)」を導入し、VARの試験運用も昨年のコンフェデレーションズ杯などで実施していた。
VARの導入で正しい判定率は98・8%まで上昇したということで、FIFAのインファンティノ会長は「VARが(ピッチ上の)審判団を確実に助けられるとの確証と具体例を得られた」とVARによる成果を強調した。
同会長は、理事会後の会見で「歴史的な決断だ。より公平で透明なスポーツになる」ともコメントしたが、ピッチでプレーする選手や監督のなかには、プレーが中断されるビデオ判定に苦言を呈する人もいる。
昨年12月のクラブW杯でVARによりゴールを取り消される場面があった。レアルマドリードのジダン監督は「何が起きたのか分かったのは4分後だった」と批判。
また、VARを採用しているドイツ1部でプレーするケルンの日本代表FW大迫は「好きじゃない。流れがあってのサッカーだと思う」と言っている。
VARは10秒から20秒で判定が得られるというが、国際サッカー評議会IFABの公表資料によれば、試合中にVARが「奪った」と定義づけした時間は1試合平均で55秒である。
たしかに選手からすれば、少しの試合中断でも集中力が途切れてしまうので、不満を抱く人も少なからずいるだろう。
また、観客や視聴者への分かりにくさなど、VARの運用において課題は残る。