プロ野球の横浜DeNAベイスターズは、2005年にシーズン3位になって以降、10年間Bクラス(4・5・6位のいずれか)だった。
2012年から4年間監督をつとめた中畑清氏の時から、チームの雰囲気は変わりつつあったが、状況が大きく変わったのは、アレックス・ラミレス氏が監督に就任した2016年。
2015年は最下位だったものの、2016年シーズンはセ・リーグ3位。Aクラス(1・2・3位のいずれか)に入ったのは11年ぶりのことだった。
惜しくもクライマックスシリーズで広島東洋カープに敗れたものの、昨年2017年はレギュラーシーズンを16年ぶりの勝ち越しで終えて、2年連続3位という成績で再びクライマックスシリーズに進出。
2016年に敗れた広島を決勝で下し、19年ぶりの日本シリーズ進出を果たした。
日本一にはなれなかったが、2016年、2017年シーズンのセ・リーグ3位という成績は、それまで長年Bクラスに留まっていたチームにとっては大きな躍進である。
「日経 xTECH(クロステック)」の記事によると、その躍進の背景にあるのは、徹底したデータ活用だったという。
そこで、横浜DeNAベイスターズが活用している3つのシステムを紹介しようと思う。
ミナトシステム
MINATO(ミナト)システムは、選手や試合に関する様々なデータを蓄積するためのシステム。
入力するデータは試合結果や個人成績からコーチが選手を指導した内容、フィジカルトレーニングの内容、選手の健康状態までさまざまで、1軍だけでなく2軍の選手も含まれているとのこと。
データを集約することで、チームに不足している戦力や強化すべき選手はどういった選手か、そのための具体的な強化方法などがわかる。
また、ミナトシステムで集めたデータはスカウトにも明確な判断基準を与えてくれるという。
例えば、2017年にFA(フリーエージェント)で阪神タイガースから獲得した大和選手について。ベイスターズに入団した場合、どれくらい得失点差に影響するのかといったデータを導き出したというのだ。
二遊間が弱いというチームの弱点を分析し、そこに守備力が高く得失点差にも好影響を与えてくれる人材は誰かという目線で選手を探した。
さらにそのデータをどれくらいのオファーとして年俸に反映させるのかといった判断もデータから推定したというのだから驚きだ。
キャンバスシステム
CANVAS(キャンバス)システムは、12球団の選手についてのデータをつぶさに記録し、分析するシステムだ。
投手と打者の相性を分析して打順の組み立てや交代投手の選択に役立てており、キャンバスのデータは試合前のミーティングでも積極的に活用するとのこと。
VR(仮想現実)システム「iCube」
横浜DeNAベイスターズが2017年に新たに導入したのが、VR(仮想現実)システム「iCube」である。
米国のEON Sports(イオンスポーツ)が開発したシステムで、国内球団では初の導入だという。
ボールの軌道分析システムである「トラックマン」に蓄積したデータに、撮影した映像を組み合わせてバッティングの感覚を養うことができる。
さらに、横浜スタジアムに「iCube」専用のトレーニングルームも新設。
ピッチャーのボールの軌道や球筋に慣れ、タイミングを取るのにも役立つことは間違いない。
また、ピッチャーは1週間程度のローテーションで登板しているため、1週間前に登板した最新のデータを入力してすぐ次の試合のために活用しているという。
VRシステムを使う選手からは、打った感覚やタイミングが合っているかを知りたいといった要望があるというが、まだ実用化にはいたっていない。
2018年シーズン優勝のカギはデータ!?
横浜DeNAベイスターズのデータ活用は、2012年にディー・エヌ・エー(DeNA)がベイスターズを買収して以降、着実に進められてきた。
他球団も様々な形でデータを収集・分析しているが、問題はデータをうまく活用できるかどうかだ。
監督やコーチの理解も得なければならないし、VRシステムのようなものを選手がどのように利用するかもポイントになってくる。
国内のプロ野球球団におけるデータ分析がどんどん重要になってきているなか、うまくデータを駆使して結果に結びつけたいところ。
横浜DeNAベイスターズが2018年シーズン優勝できるかどうかのカギはデータ活用にかかっているかもしれない。
プロ野球のDeNA、知られざるミナトとキャンバスという武器 | 日経 xTECH(クロステック)